そんだけ。―『好き』が始まった日の話。
悩みたくないのに、やっぱり悩んで、決めた服はいつもよりちょっとひらひら。

なのに、迎えに来てくれたその人の前で、あたしはどうしても華奢なミュールが履けなくて。


気付いたらいつものぺたんこサンダルで、マンションの階段をぱたぱた駆け下りていた。



歩きやすいからこれでいいの。

って踊り場で見上げながら言ったら、


僕も。

って、その人は自分の靴を見せながら、ちっちゃく笑った。
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