スナオじゃないキミ.
“各クラス展示の発表は残り10分です。
校内の生徒以外の方は......”
「絵麻、私係あるから行くね?」
「あ、おっけー!頑張ってね。 」
屋上の近くの階段まで急ぐ。
階段を上がると、見慣れた背中。
「おし、先生来る前に行こっか。 」
「はいっ。」
屋上の小屋に急ぐ。
“生徒は速やかに校庭へ集まってください。”
「校庭で花火とか見るんですか?」
「うん。やっぱり校庭行く?」
校庭行けばみんなと一体感を楽しめる。
けど和くんとは見れない。
屋上にいれば見れる。
「和くんと一緒に見たいですっ。」
「そっ。」
ただ二人で黙って床に座る。
「ねぇ、そろそろタメ口でいいよ。」
「頑張ってみます。」
先輩にタメ口を使うのが少し苦手。
でも頑張ってみよう。
「あ、こっちの窓から校庭見えるよ。」
奥の窓を見ながら和くんが言う。
「ほんとだー。みんなちっちゃい。」
誰が誰だかわかんない。
「花火まであと30分くらいかなー。」
「結構ありますね。」
屋上のドアがバタンとあく。
ざわざわとした声。
「しーっ。先生来たから。」
そう言われて影になる場所に移動した。
ドキドキする。
しばらく無言で待つ。
喋るに喋れない。
「多分そろそろかな。」
和くんはほんとに私と一緒にでいいのかな。
「和くん、一緒に見るの私でいいんですか?」
「当たり前。 」
当たり前って言う言葉に嬉しくなる。
ちょっとして、ドーンと大きい花火が上がった。
窓から良く見える。
「始まりましたね。」
「すぐ終わるけどね。」
綺麗だなぁ。
下からキャーキャー聞こえてくる。
「この間に何人カップルできたかなー。」
「結構できるんですか?」
「昨年はしってるだけで5カップルはできてる。」
「そんなにできるんだぁ。」
すごいなぁ。学校祭マジックか。
「多分今頃女子が、松田くんいないって
騒いでるわ(笑)」
和くんは冗談で言ってるけど、
チア部の先輩の様子から
あまり冗談に聞こえない。
「多分探してますよ?」
「じゃあ行っちゃおっかなー。」
そう言っておもむろに立ち上がる和くん。
え、ほんとに行っちゃうの?
「ほんとにですか?」
「ん。」
ここで?このタイミングで?
私ここで一人ぼっち?
「嘘だって。」
すごく振り回されてる(笑)
ちょっと拗ねたふりしてみよう。
「はーる。なんか怒ってんの?」
唐突のはる呼びに動揺しながらも
拗ねる風にしてみる。
「ごめんね。ここにいるから。ね?」
頭ぽんぽんしながら言ってくるけど、
動じずそっぽを向く。
「はる、こっち向いて一回だけ。」
「強気だねぇ。
向かないなら強制的に向かせるよ?」
そう言ってほんとに強制的に向かせられた。
目の前には和くんの顔。
どんどん顔が近づいてくる。
目をつぶって、薄目で見る。
和くんまで3cm.....2cm.......1cm.....。
あれ?こない。
「え?」
思わず出してしまった。
悪魔笑顔で笑いながら、「え?」って顔をしてくる。
「どうしたの遥奈ちゃん?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。
「いや.....もういいっ。」
ほんとに拗ねてやる。
「ごめんって。許してごめん。」
「許しませんっ。」
「話すときは顔を見て話そうよ。」
今度はしっかり和くんの顔を見て。
「許しませ....」
チュッ
言ってる途中に不意打ち。
「許してくれる?」
「ん.....。」
和くんってほんとずるいな。
お互いが好き、これでいいんだと思ってた。
これから、辛くて悲しくて苦しい時が
くるなんて全然予想してなかった。