スナオじゃないキミ.
「ここ、俺家。」
駅から出て、
たくさんの住宅街のすぐ近くに
和くんの家はあった。
大きな家。
ドーンみたいな感じではないけど、
普通に大きい家に分類される位大きい。
割と洋風な家ですんごい可愛い外観。
綺麗なミルク色の壁に、
茶色のドアが映えてる。
「こっち。」
そう言って玄関とは逆の方に案内された。
家の真後ろの方にもう一つドアがあった。
慣れた手つきで鍵を開ける和くん。
「ここから入るんですか?」
「うん。どうぞ。」
「お邪魔します。」
ドアの奥には和くんの部屋。
モノがあんまりなくて、
すごい綺麗。
壁には部活の写真やコルクボードが飾ってあった。
「すごい綺麗ですね。」
「ん?昨日頑張って掃除したの。」
ベッドに座ってうつむきながらニヤニヤする和くん。
密室空間に二人きりだと、屋上よりドキドキする。
「あ、適当に座って。」
テーブルの近くに座る。
手汗がはんぱない。
緊張して何話せばいいかわかんなくなる。
「遥奈髪切ったんだね。」
「うんっ。」
勝手なイメージだけど和くんそういうのに気づく感じしないから
ちょっと嬉しい。
「いま飲み物持ってくるからそこら辺適当にあさってて。」
「はーい。」
和くんが出ていくと、部屋がシーンとする。
飾ってあった写真を見ると、
中学生の和くんと蓮さんが
にっこり笑ってた。
変わらないなぁ二人とも。
近くのコルクボードに目を向ける。
センターの写真は和くんと可愛い女の子のツーショット。
誰だろう。
よくよく見てみると、蓮さんも写ってる。
たくさんの写真が貼られてる下の方に
小さく“さくらから和孝へ”って書かれてた。
この人が和くんの幼なじみかな?
すごく可愛い。
幼さも残してて目がぱっちりしてて
私とは到底かけ離れてる。
和くん、こういう人が好きのかな。
しかも、和くんのことを和孝って呼んでる人初めて見た。
和孝って呼ばれるの嫌い、って言ってたし。
多分、この“さくらちゃん”は
和孝って呼ばれてもいいくらい大切な存在なんだなぁ。
虚しくなる。見ちゃいけないものを見た気。
ちょっと心が重い。
「ごめんおまたせ。はい。」
コップを二つ持った和くんが、
一つ差し出してくる。
「ありがとう。」
コップを受け取る時の距離がちょっと近くてドキドキする。
心臓持つかなぁ。