涙がこぼれる季節(とき)【完】
「この人、誰?」

「それは、美桜の姉ちゃん。今、ハタチ」

「あ、じゃあ、これ、悠斗の弟だろ」


自信満々に吉崎が指したのは、結衣の弟(現在小6)だった。


「は? 俺、弟なんていないし」


悠斗は、以前自分が言ったことをすでに忘れていた。


「あれ? でも、弟の夕飯作るって――」


「あ~、ハイハイ、アレね。あんなの、ウソ、ウソ。

俺、一人っ子だし、母ちゃんずっと家に居るし、だいたい飯なんてカップラーメンしか作れないし」


「じゃあ、なんで、そんな嘘――」


「シュウに協力してやったんじゃん。

結衣のこと好きなくせに、全然しゃべれないみたいだったから、チャンス作ってやったんだよ」


悠斗はまた嘘をつき、


「シュウたちが今こうしていられるのは、俺たちのおかげなんだからな」

「そうだったんだ……」


吉崎はまた騙されていた。

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