涙がこぼれる季節(とき)【完】
「でも、毎日一緒にいたのに、なんであんなに緊張してたの?」


いつもは無邪気な結衣だが、今は邪気を秘めていた。


そして、吉崎は、結衣の企みにまんまと引っ掛かった。


「それは……結衣のことが……好きだからだよ」


私と悠斗の手前もあってか、吉崎はゴニョゴニョと口ごもった。


「なあに? もう一回言って」

「いや、聞こえただろ」

「ううん、もっとハッキリ言って」

「……悠斗たち、いるし」

「いなくても言ってくれないくせに」


だからこのチャンスに言わせたい、という結衣の気持ちはわかるが。


できればそういうやり取りは、是非とも2人きりの時にやって頂きたい。


さもないと――。

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