涙がこぼれる季節(とき)【完】
悠斗の機嫌はなんとか直ったようだが、今度は、吉崎の方が限界に達したらしい。


その後、結衣ママが持って来てくれたマドレーヌを、


「はい、修ちゃん」


結衣に差し出されると、


「俺はいいよ。悠斗にあげて」


目も合わさず、棘のある口調で拒否した。


悠斗のために作ってもらったんだろ――。


吉崎が必死で抑えている言葉が、伝わってきた。


もちろん、吉崎も本気でそんなことにこだわっている訳ではない。


結衣と悠斗――幼なじみの2人のやり取りに、嫉妬していたのだ。

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