涙がこぼれる季節(とき)【完】

花火大会

<吉崎修太郎>


8月最後の土曜日、S市の花火大会――昨年は野球部で行った――に、今年は、結衣と2人で行くことになった。


夕方、いつもの曲がり角で待っていると、


「遅れてごめんね~」


結衣が、佐伯とともに浴衣姿で現れた。



初めて見る結衣の浴衣姿――。


オレは目と心を奪われてしまった。



「お母さんに美桜ちゃんと2人分着付けしてもらってたら、時間かかっちゃって」


佐伯は今年も野球部の連中と行くらしい。


いったん家に帰ると言うので、3人で佐伯の家へ向かったが、その間ずっと、佐伯とじゃれ合う結衣にみとれていた。




花火なんか、どうでもいい。




結衣だけをずっと見ていたい。






それが、正直な気持ちだった。

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