涙がこぼれる季節(とき)【完】
佐伯と別れると、結衣の話し相手は、当然オレに代わった。


舞い上がっていたために、オレは「ああ」「うん」「そうだね」などと、上の空で相づちを返していたのだが。


「どうせ、私は、美桜ちゃんみたいにキレイじゃないですよ」


突然、結衣が立ち止まった。



どうやら、打つべきでないところで、相づちを打ってしまったらしい。


結衣が何を怒っているのかも、どう弁解すればいいのかもわからず、途方に暮れていたのだが。


「修ちゃん、ほんとは、美桜ちゃんみたいなキレイな子と歩きたいんでしょ」


すねる結衣を見ているうちに、



結衣は、オレのこと、本当に好きでいてくれるんだな――。



結衣への愛しさで、胸がいっぱいになってしまった。


そして。


結衣に想われているという自信が、オレを大胆にした。





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