涙がこぼれる季節(とき)【完】
2人の写真を撮ると、また何か思いついたのか、


「せっかく浴衣着てるんだから、3人の写真、撮ってやるよ」


悠斗は上機嫌で、私と真紀に声をかけた。


ちなみに、真紀が浴衣なのは、残念ながらカレシができたわけではなく、私に合わせただけのこと。


そして、私が浴衣なのは、結衣ママに、結衣が私と一緒に花火大会に行くと印象付けるためだった。



さすがに、女子3人の写真に吉崎は加われない。


結衣と吉崎の手が離れ――。


悠斗の企みは成功した。




女子3人の後は、その場にいたメンバーが入れ替わり立ち替わり、ちょっとした撮影会となり、


「結衣と2人で撮ってあげようか?」


私は悠斗の耳元で囁いた。


すでに数人と一緒に結衣と1枚の写真に収まってはいたが、吉崎の手前、結衣と2人きりで撮ることを悠斗が遠慮しているように見えたのだ。


だが、一瞬の逡巡の後、


「……いや、いい」


悠斗は首を横に振った。

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