涙がこぼれる季節(とき)【完】
撮影も一段落がつくと。


結衣と吉崎は、お互いの視線を交わして。


どちらからともなく、手をつないだ。


結衣の柔らかな表情はとても可愛くて、私までキュンとしてしまったほど。


悠斗は胸を乱されたのか、


「ったく、やってらんねぇな。目障りだから、おまえら、もう、どっか行け」


冗談とも本気ともつかない口調で叫んだ。


「言われなくても行きますよ~だ。あ、写真、楽しみにしてるからね~」


天真爛漫な笑顔で去って行く結衣に、


「知るか、自分でやれっ」


悪態をついた、悠斗。




だが、その帰り道、


「あ、ちょっと寄ってくから」


さっそくコンビニでプリントをする始末。


「今じゃなくても……」

「いや、でも、明日の午前中、わざわざ来んの、面倒臭いし」


結衣が楽しみにしている写真を、少しでも早く渡して喜ばせてあげたい――。


つまりは、そういうことなのだ。

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