涙がこぼれる季節(とき)【完】
2学期が始まり、放課後、3組の前を通ると、誰も居なくなった教室で吉崎が暇そうにしていた。


いつもなら、とっくに結衣と帰っている時間。


ケンカでもしたのかと少しだけ心配になったが、


「結衣は?」

「委員会」


それこそ、杞憂というもの。



「……じゃ、結衣によろしく」

「あ、今、時間ある?」


吉崎に引き止められ、


「あるけど?」


反射的に答えてしまってから、後悔した。


面倒臭いことになりそうだったからだ。



「……あのさ」


口ごもる吉崎に、私はさらに後悔の念を強くした。


「悠斗って、結衣のこと好きなのかな?」



予感的中――。



……さて、どうしたものか。

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