涙がこぼれる季節(とき)【完】
「結衣~」


階下から、結衣のお母さんの声と足音がして。


結衣は、プレゼントを慌ててテーブルの下に隠した。


「今美桜ちゃんと悠くんが来て、急用ができたから帰るって。

これ、美桜ちゃんからのプレゼント」


おばさんの左手のお盆には、2人分のケーキと紅茶。



「こっちは、悠くんから」


右手に持っていたのは、額入りの写真――オレと浴衣姿の結衣がしっかりと手をつないでいる写真だった。


包装無し――むき出しの状態でおばさんに渡すか?!



結衣もオレも、激しく動揺した。


「あ、あの……」


おばさんに言うべき言葉を探しながらも、これが自分の家――自分の母親じゃなくて本当に良かったと思っていた。

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