涙がこぼれる季節(とき)【完】
<佐伯美桜>


いつものように、口げんかをする2人。


だが、いつもとは違う、悠斗の表情。


私は嫌な予感がして、


「ちょっと、もうやめ――」


間に入ろうとしたが、遅かった。


「――何するのよっ」


悠斗は水切りカゴからヘラをつかみ取り、ハート型のど真ん中に突き刺した。


そして、すくい上げたケーキを口に運び、


「うん、美味い。初めて作った割には上手くできてるよ、うん」


この上なくふてぶてしい態度を取った。



「バカっ。悠斗なんて、大嫌いっ」


涙目の結衣ににらまれると、


「あー、もう、やってらんねー」


悠斗は、ふて腐れて外に出て行った。

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