涙がこぼれる季節(とき)【完】
野球部の平日の全体練習は、19時まで。


その後は自主練となるが、4月下旬から始まる春季大会のため、1年生は応援練習することになった。


野球部の3年生――応援団長を中心とした数人に、高校野球応援の定番曲に加え、K高オリジナル曲の振り付けと歌詞(替歌)を指導されたのだが。


結衣と佐伯は最初から完璧に踊り、特に佐伯は超優秀だと思われていたため、


「もう覚えたの?!」


みんなに驚かれていた。


「違う、違う――小学生の時から練習してたんだよ」


結衣たちは、小4の夏、準々決勝を見に行き、親に応援風景をビデオに撮ってもらって振り付けを真似していたらしい。


「K高でマネージャーやって甲子園に行くのが、小3の時からの夢なんだ~」


みんなの前で発表した結衣は、その後の応援練習をとても楽しそうにやっていた。


オレと別れることを決めてからの寂しそうな結衣は、別人だったのかと思うほど。


こんなに生き生きとした結衣は見たことがなく、


本当に嬉しいんだろうな――。


オレは込み上げる笑いをこらえていた。

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