涙がこぼれる季節(とき)【完】
<松山悠斗>


バッターボックスに向かう俺は、ちゃんと歩けているか不安になるほど、ガチガチに緊張していた。



俺は、すでに3本のヒットを打っていた。



1試合でヒットを4本打ったことなど今までになく、打たなければという気負いと、打てそうもないという不安に押し潰されてしまいそうだった。




もし、ここで俺が打てなくても、まだ9回裏がある。


思ってはみるが、おそらくデッドボールを与えたばかりのピッチャーは、この状況に動揺しているはず。


どう考えても、ここが、今日一番の勝負どころだった。




そして、もし、ヒットを打てたなら、逆転――勝利――甲子園出場。


結衣たちの夢が叶う可能性が、高くなる。





ふと、セカンドランナー――シュウの姿が目に入り、俺は武者震いしてバッターボックスに立った。

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