涙がこぼれる季節(とき)【完】
結衣と真紀とわかりやすい連中は、花火を見るのに夢中――連中に限っては、花火を見ている結衣に夢中。


そして、私たち残りのメンバーは、ヤキソバなんかを食べていた。


こちらには吉崎もいて、結衣がこの場にいないからなのか、よく食べ、よく笑い、よくしゃべっていた。


「あ、俺、金魚すくい上手いんだよね。多分、この中で一番だと思う」


得意げな吉崎の表情が、負けず嫌いの悠斗の導火線に火を点けてしまった。


「それじゃ、俺と勝負しようぜ。ポイ3枚で何匹取れるか。負けた方がラムネおごりってことで」


金魚すくいなんか大して上手くもないくせに、悠斗が吉崎に挑んだのにはそれなりの勝算があったかららしい。


「オレの分も買っといて。ちょっとトイレ行って来る」


吉崎にお金を渡すと、悠斗はいったん姿を消したがすぐに戻って来た。


「じゃあ、始めようぜ」


悠斗の合図で開始して間もなく、吉崎はすでに3匹もすくっていた。


悠斗は1枚目が破れたのに、ゼロ。

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