涙がこぼれる季節(とき)【完】
「マジかよ――あ」


焦る悠斗の表情が急に緩んだと思ったら、


「すご~い、もう3匹も取ったの?」


結衣が現れ、吉崎の横にしゃがみこんだ。


その瞬間、吉崎は固まり、水に浸かったままのポイは破れてしまった。


「……破れちゃったよ?」


結衣に声をかけられて2枚目を手にしたものの、吉崎はうまく狙いをつけることができないようだ。


姑息――。


よくこんなくだらないことを思いつく、と呆れて悠斗を見ると、なんとか2匹目をゲットしていた。



「吉崎~、さっきまでの神業はどうしたのよ――あ、結衣、もうちょっとそっちにずれて」


結衣と吉崎が密着するように、私は結衣の隣りに移動した。



半袖と半袖の、直接触れた、腕――。



吉崎の意識は、もはや金魚すくいには向いていない。


2枚目も、あっさり破れてしまった。

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