涙がこぼれる季節(とき)【完】
吉崎とはほとんど話したことがなく、おとなしい人だろうと思っていたけど、意外にも、練習後にみんなとふざけ合ったり爆笑したりしていた。



真紀ちゃんは吉崎と同じクラス。


私は教科書を忘れたフリをしたり、どうでもいいような連絡事項を伝えるために真紀ちゃんのところへ行き、こっそり吉崎を盗み見るようになった。


目の端に映る吉崎は、だいたいいつも男子と楽しそうに笑っていたけど。


たまにその中に女子がいて、私は切なくなった。


2年近くも同じ部活に入っていたのに、その笑顔が私に向けられたことはたったの一度もなくて。


吉崎とは「友達」ですらない、ということを思い知ってしまったから。








……私は、吉崎に恋をしていた。

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