涙がこぼれる季節(とき)【完】
<吉崎修太郎>


練習後、着替えて部室を出ると、いきなり悠斗がオレの肩に手を回してきた。


「一緒に帰ろうぜ」

「え、なんで?」


悠斗はいつも、水沢と佐伯と3人で帰っているのに。


「シュウんちって、3丁目のスーパーの近くなんだって?

途中まで一緒じゃん。いやぁ、昨日偶然知ってさぁ」



……昨日?


いや、確か以前、そんな話をしたことがあるような――。



だが、オレの思考は停止した。



「早く帰ろ」


水沢(と佐伯)が目の前に現れ、オレ(と悠斗)とともに歩き出したからだ。



それからオレは、緊張しすぎて、聞かれたことに答えるのが――しかも、最少単語数で答えるのが、精一杯だった。

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