涙がこぼれる季節(とき)【完】
悠斗の家の前まで来ると、


「シュウ、結衣のこと送ってってくれよ」


悠斗に言われて、


「えッ?!」


思わず声を上げてしまった。


「いつもはオレたちが回り道して送ってたんだけど。

うちの母ちゃん仕事で帰りが遅くて、弟のメシオレが作らなきゃならないんだよ」


「あ、そ、そう、なんだ」


パニックになりながらも、悠斗は弟のためにご飯を作ってあげる優しい兄キなのか、と妙に感心していた。


「ここから5分くらいだし、頼んだぞ」

「あ、うん」


このやりとりに、


「あの……私なら大丈夫だよ」


水沢は、オレが渋っていると勘違いしてしまったらしい。


「いやッ、送るから」


オレは慌てて叫んだ。



この幸運を逃すほど、オレはバカじゃないのだ。

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