涙がこぼれる季節(とき)【完】
<佐伯美桜>


「――という訳で、吉崎に無理に送ってもらうの、もう嫌なんだって」


結衣から聞かされたことを、そのまま悠斗に伝えた。


「はあ? なんだ、ソレ。ったく、ワガママなヤツだな。

言えば俺たちが何でもやってくれると思ってんのかね」


言葉とは裏腹に、悠斗は嬉しそうだった。


「んじゃ、どうする? 今さら別々に帰ろう、なんて言えないよな」


それはさすがに、吉崎が気の毒だ。


せっかく結衣と2人きりの時間が持てて有頂天になっているのに。


緊張でしゃべれないのを変なふうに誤解されたうえに、唯一の接点を断たれてしまうなんて。


正直、緊張してる場合じゃないよ、と教えてあげたくなるが。


それで直るくらいなら、とっくに、結衣と仲良く――「友達」になれているだろう。


緊張は、自分の意思で操れるものではないのだから。

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