涙がこぼれる季節(とき)【完】
「キャプテン」


俺が部室を指すと、


「みんな、練習続けて」


シュウはキャプテンらしく周りに声をかけると、俺とともに部室に入った。


「あんた、ここのとこ、全然あかんで。

たとえ悩みがあったとしてもな、部員らの前では明るくしとかんと。

今のあんたは、マネージャー失格や」


美桜の京都弁を、結衣は神妙な面持ちで聞いていた。


このぶんなら、美桜が別人になることもないだろう――。


安心した直後、


「佐伯の言うこともわかるけどさ」


シュウが口を挟んだ。


しかも、「けどさ」なんて逆接を使って。


普段は聞かれたことにも満足に答えられないくせに、余計なことを言い出したシュウを、睨みつけた。


だが、シュウは俺の視線に気づかず、話を続けた。

< 58 / 200 >

この作品をシェア

pagetop