涙がこぼれる季節(とき)【完】
「……どう? なに暗くなってんだよ、とかってムカつかない?」

「いや、それはないって。なんで元気ないんだろうって、まあ、気にはなるけど」

「ふ~ん。じゃあ、練習中に落ち込んでてもいいんだ?」

「いや、いいってことは……ないけど」

「なによ、何か言いたいことあるの?」

「……いや」

「あるなら、ハッキリ言いなさいよ――男でしょ」



男でしょ、という美桜の一言に、俺は胸騒ぎを覚えた。


美桜は何を言わせようとしているのか。


だが、シュウには言えないはず――言えるはずがない。



「もういいじゃん、練習戻ろうぜ」


俺が腕をつかむと、美桜は鋭い視線を返してきた。


黙ってろ――無言の圧力に、慌てて手を放した。

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