涙がこぼれる季節(とき)【完】
美桜の視線が自分に戻ってくると、シュウは意を決して口を開いた。


「元気がないのには、それなりの理由があるんだろうけど……。

だからしょうがない、とは思うけど、早く元気になってほしい。

……やっぱり……友達には、いつも笑っててほしいから」


たどたどしいシュウの言葉に、ずっとうつむいていた結衣の頬が赤らんだ。


だが、これはシュウの「言いたいこと」ではない。


本当なら「友達」じゃなく、「好きな人」と言いたかったはずだ。


言いたいことも言えない、シュウは本当にダメなヤツ。


しかしこれでもう、結衣がため息をつくことはなくなるだろう。


「友達」だと、シュウに思われていたことを知ったのだから。

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