涙がこぼれる季節(とき)【完】
数日後、4人での帰り道、美桜ちゃんの家の前で、


「……今日から、また送ってくれる?」


ドキドキしながら吉崎を見た。


「……え?」


吉崎は一瞬戸惑いを見せたけど、


「じゃあ、おばあちゃんの具合、良くなったんだ?」


澄んだ瞳を私に返してくれた。


こんなにまっすぐ視線が交わったのは、初めて。


「……うん」


私は急に恥ずかしくなって、目をそらしてしまった。


すると、吉崎の隣りで、美桜ちゃんが笑いをこらえていた。


きっと、吉崎が、あまりにも「いい人」だったから。


「よかったな」


明るい声に、視線を戻すと――。


吉崎の優しい笑顔が、私だけに向けられていて。


私は――ワガママな私は、その時思った。


せめて友達になりたいと思っていたけど、友達なんかじゃ、イヤ。





吉崎の、特別な女の子になりたいって。

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