涙がこぼれる季節(とき)【完】
<松山悠斗>


ゴールデンウィークが終わり、修学旅行を控えてまだそんな気分になれないのに、進路希望調査用紙が配られた。


「せめて、修学旅行が終わってからにしてほしいよな」


帰り道、俺が愚痴ると、


「吉崎は、高校、どこ行きたいの?」


結衣がさり気なく探りを入れた。


「あ、いや、まだ――」


シュウの焦り方に、俺は確信した。



シュウはK高に行くつもり――K高の野球部に入るつもりなのだ、と。



K高は野球部以外の運動部も強いが、学力レベル――偏差値の方も、高め。


俺には厳しい現実だったが、シュウなら合格できるだろう。


もともとできる方だったが、シュウの成績が急に上がったのは、今思えば、俺の家でビデオを見た後だったかもしれない。



あの時は、まさか結衣がシュウを好きになるなんて思いもしなかったが……。

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