涙がこぼれる季節(とき)【完】
「今度は、2人で撮りたい」


一瞬、心の声が出てしまったのかと焦ったが、女子の声だった。


「ごめん、オレ、好きな子いるから、2人は勘弁して」

「え~、別にいいじゃん」

「そうだよ、カノジョじゃないんだし」


何気なくキツイ一言には、


「もうすぐカノジョになる予定だから」


桐谷はまったくめげなかったが。


「そんなこと言ってるけど、もう1年以上フラれ続けてるじゃん」

「そうだよ。いい加減あきらめなよ」


思いきり心無い言葉には、さすがの桐谷も傷ついたらしい。


「あきらめようと思ってあきらめられるなら、もう、とっくにあきらめてるよ」


低くつぶやいて、桐谷は立ち去った。



その気持ちは、痛いほどわかった。


いつも自信満々で「結衣ちゃん」などとなれなれしくて、イヤなヤツだが。


水沢以外の女子には、どちらかというと冷たい対応で、バレンタインのチョコも誰からも受け取らなかったらしい。


意外にも、桐谷は一途で真面目だった。

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