涙がこぼれる季節(とき)【完】
「嬉しいでしょ」


不意に、見透かすような目を佐伯に向けられて、オレは焦った。


「な、なんで?」

「両手に花、で」


だから、違っていてホッと一息。


「なにが、花、だよ。ほら、早く並べ」

「ちょっと待ってよ――あ、吉崎はそこに立ってね」


悠斗に急かされ、佐伯に指示され、水沢の隣りに移動した。



「ハイ、撮るよ~」


フラッシュが光り、


「あ、目つぶっちゃったから、もう一回撮って~」


佐伯が叫ぶと、


「あ~、ったく、目開いててもつぶってても大して変わらねぇって――あ~、ハイ、撮るよ~」


悠斗は面倒臭そうにシャッターを押した。

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