涙がこぼれる季節(とき)【完】
6月下旬。

地区大会の1試合目は、勝利。


それなのに、水沢は元気がなかった。


2人きりの帰り道、いつもは何か話しかけてくるのに、今日は黙り込んでいる。


またおばあちゃんの具合が良くないのか、と気になって、


「……なんかあった?」


おそるおそる聞いてみた。


「この大会が終わったら……引退だね」


水沢は感傷的になっていただけのようで、とりあえずホッとしたが。




「そしたらもう、こんなふうに……一緒に帰ること、ないよね」




言われて初めて、気がついた。


引退したら下校時間も早くなるし、オレが送って行く必要も状況もなくなる。


クラスが違うオレたちの接点は、もう、なくなってしまうのだ。


「…………」


オレは何も答えられず、無言のまま水沢と別れた。

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