涙がこぼれる季節(とき)【完】
思えば、水沢を送って行けるのは、いくつかの偶然が重なったおかげ。



もしも――。


水沢たちの通学路が、オレと同じ方向じゃなかったら。


それを悠斗が気づかないままだったら。


悠斗のお母さんの帰りが遅くなかったら。


悠斗に弟がいなかったら――。




少しでも状況が違っていたら、未だに、水沢を見ているだけだったかもしれない。




ただ、元に戻るだけ――。


自分に言い聞かせた。




卒業するまでの、我慢。


K高の野球部に入ったら、また、同じ野球部員という接点ができる。




だから今は、2人きりの時間がなくなってしまうことを受け容れるしかない。



それ以外の選択肢など、今のオレにはないのだから。

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