涙がこぼれる季節(とき)【完】
「あ~っ」


再び布団に倒れ込んだ時、


「具合、どう?」


ちょうど母親が様子を見に来た。


「……最悪」

「え? じゃあ、病院行く? 川田内科なら今日もやってるわよ」

「いや、最悪なのは、気分――精神的に、だから」

「まあ、しょうがないわよ。M中は昨年優勝してるし」


母親は、オレが試合に負けて落ち込んでいると誤解したようだ。


「体調がいいんだったら、散歩でもしてきなさいよ」

「……まだメシ食ってないんだけど」


「だ~か~ら~、そのメシを買ってきてほしいのよ。ついでに、夕飯の材料も。

うち、今、ソーメンしかないのよ」


「なんでオレが――」

「まあまあ、好きなお菓子買ってもいいから。はい、これ」


メモとお金を無理やり渡され、


好きなお菓子って……もう、子供じゃないっつーの。


オレは渋々家を出た。

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