殺し屋の愛し方
私は、ルーチェ街から出たことがなかった。
まだ暗く、何も見えないけど大好きな母と共に《外》に出れたことに
とても喜んでいた。
その日は雨だった。
「うわ…」
結構な距離を一回も止まらずに走ってきた私にとっては、黒い空から落ちてくる無数の雫は、冷たくて、とても気持ちがいい。
「もう少しで、屋敷につくわ」
「…誰のですか?」
そこで母は、なにかから開放されたかのようなスッキリとした笑を見せ、
「これから私達が暮らすことになる屋敷よ」
本当に嬉しそうなうわずった声で答えた。
母の様子を見て、自分の気分が今までにないほど上がっていくのを感じた。
我慢できずに走りながら母に抱きついた。
口角が、母とおなじくらいまであがる。
――――その日は雨だった――――