心做し
気づけば僕は雨の中
外にいた。
いや、いたのではなく
“捨てられた”のだ。
なぜこうなったのかは理解できない。





「…えっ…」





…今、何か声が聞こえた気がするのだが。





「大丈夫ですか…?」





“気がする”ではなく、本当に聞こえる。





「服も真っ黒でびしゃびしゃ…」





何をしている。
なぜご主人様でもないのに勝手に僕に触れている…。





「あ、あの。」





「大丈夫です。
心配しないでください。」





「…でも…。家に帰った方が…。」





「僕にはないです。家なんて。」




「え…?」





「気にしないでください。」


 


「え、で、でも!!
えっと、えっと、じゃあ、わ、私の家に来てください!」





「は…?」





なにを言い出しているのだ。
この人は。





「ぁ、じゃ、じゃあ、ホテルでも!」





「何度も言いますが、
心配しないでください。」





「…。」





本当に面倒くさい…。





「…じゃあ、あなたの家でいいですから。」





「よかった…
じゃあ、行きましょう…!」





…なぜ自分の家に他人が上がりこむのに“よかった”なんて言うんだ…?
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