なみだのまえに
そんな樹に、私は無性に腹が立ってしまった。
私は、こんなに不安なのに。
樹が私とのことをどうするつもりなのかが全然分からなくて。
遠距離になっても私のことを彼女として見てくれるのか、泣きたくなるくらい、不安だったのに。
それなのに、なんなの、この態度。
私が不安になっているのが分かっていたくせに、呆れたようなため息なんて、ひどい。
「あのな、藤澤たちはふたりでちゃんと決めたんだろ、別れること。俺たちはそんな話してねぇのに、なんでお前まで不安になるんだよ」
「だって、進学したら遠距離になるのは一緒だよ。不安になったって仕方ないじゃん。
……大学を決めるときだって、樹は私に一度だって相談してくれなかった。これからの樹の中に、私の居場所はあるのかなって、考えちゃったんだもん!」
思わず叫ぶようにそう言ったら、樹は再びため息を吐く。
……なんなの、それ。
本当、ひどい。
「……あのな。お前だって、自分の進路決めるときに俺に一度だって相談したことがあったか?」
「……え」
静かな口調で言われ、私は思わず自分の行動を顧みた。