なみだのまえに


「さー、これであとは未来(みき)だけだよ、彼氏持ちなの。……どうするの?」

首を傾げて私の顔を見てくる茉莉果。

いや、どうするの、って言われても。


「……やっぱり、樹(いつき)は別れたいと思ってるのかな」

「知らないけど、未来と佐野だって卒業したらバラバラでしょ。
未来はどうなのよ?遠距離でやっていける自信、あるの?」

思わず零れた私の不安は一蹴して、私自身の意志を確認しようとする茉莉果に、私は困ったような笑みを作ることしかできなかった。

「どうかな……。私は、大丈夫だと思っているけど」

……あの樹と、遠距離なんて。

多分、私が頑張らなきゃ絶対無理だよね。

電話もメールも会いに行くのも、きっと全部私から。

そんな未来が見えるようだ。

だけど、そんなことを恐れていたら、そもそも樹と付き合えてなんかいない。

充分今だって私ばっかりが好きなんだから、大丈夫。

何も、変わらないよ。

……って、私はそう思っていても、もしかしたら樹は違うかもしれない。
遠距離を理由に、別れようとするかもしれない。

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