なみだのまえに
「あ、おみくじ!おみくじ引こう!」
お参りの列に並びながら、目に入った巫女さんたちの姿におみくじの存在を思い出して、樹に向かってそう言う。
「ん、お参りしたらな。高橋はまず、志望校合格、ちゃんとお願いしとかないとだろ?」
「……はーい」
もちろんそれも大事だけど、私としては樹とのこれからも真剣にお願いしたいところなんだけどなぁ。
「樹は何をお願いするの?」
「言わない」
「なんでよ、ケチ」
いつもいつも、樹ばかり私のことを分かっていて、私は樹のことを全然教えてもらえない。
大事なことは、何も。
進路のことだって、樹は自分で全部決めてしまって、相談なんて一度もされなかった。
しっかり者で、やりたいことがしっかり見えていて。
そんな樹が好きだから、何も相談してくれなかったことを寂しいと思うなんておかしいことだけど……。
ずらりと並んだ人の列の最後尾につき、ふぅ、と息を吐き出す。
同じようにお参りに並ぶ人の中には、私たちのようにカップルなのだろう二人組も結構いて。
もしかしたら、彼らにも私たちと同じように、どんなに願っていても、いつかふたりの道が分かれてしまうときが来るのかもしれない。
そう思ったら、なんだか切なかった。
……私と樹だって、まだ別れると決まったわけじゃないのに。
こんなふうに考えてしまう時点で、もうダメなのかもしれない。