なみだのまえに
「……うう」
自分の想像に悲しくなって、泣きたくなった。
「え、何、どうした!?」
私の様子がおかしいことに気が付いたらしい樹が、驚いたように私を見た。
「おい、高橋?」
「ごめん……、なんでもない」
こんな風になっても、私は思ったことが言えない。
そんな自分が嫌だけど、自分の感情全部を吐き出して樹に嫌われてしまうよりずっとマシだ。
「なんでもないわけないだろ。……ちょっと、こっち来い」
そう言って、樹は私の手を取ると、お参りに並ぶ人の列から抜けて、出店がでている大きな通りから少し離れた場所に出た。
先程までの賑わいが嘘のように、シンと静まりかえり、全く人気がない。
地面に積もる雪はまだほとんど踏み荒らされた跡もなく、まっさらなまま。
今も微かに舞う雪がその厚みを少しずつ重ねている。
「……で、どうした?」
私の手を掴んだまま、心配そうというよりはいつもどおりの冷静でまっすぐな声。
「な、なんでもないってば。寒すぎて涙腺がおかしくなっちゃったのかも。びっくりさせてごめんね」
さすがにもう涙の気配は消えていて、私はえへへと笑った。
感情に浸りすぎちゃってたよ。
だめだなぁ、私。