Le Petit PrincesseII
「…お前、砂浜でおかしいと思わなかったか?」


男はそう言いながら、意味ありげな笑みを浮かべた。


ステファニーは「砂浜」という言葉に、今朝見た銅像を思い出した。


「あの銅像、やっぱりヴァレンティーヌがモデルになってるの?」


ステファニーは朝食後の散歩の時、砂浜にヴァレンティーヌそっくりの銅像があったのを見たのだ。



「…砂浜にあるのもおかしいし、あんなのいつ建てたんだろう…?ヴァレンティーヌがこの国に来てからまだ2日も経ってない。もしヴァレンティーヌをモデルにしたんだったらヴァレンティーヌがこの国に来てからじゃなきゃ無理だし…。」


「まぁお前が思ってる通りだ。あの銅像は誰かが建てた物じゃないだろう。」


「…じゃあどうしてあの銅像があるの?」


「昨日お前が探してたであろう女を俺は見た。」


「え?ヴァレンティーヌなら私もあの後見たけど…」


「俺はお前が来る前のあの女を見てたけど?俺の部屋からは砂浜が見える。銅像がある場所もちょうど見える。」


「…まさか…昨日の夜ヴァレンティーヌは砂浜にいたの?」


「俺にはそう見えたけどな。」


「…ヴァレンティーヌはあの場所で…本当に銅像にされちゃった、とか…?」


「まぁ見てる限りはそんな感じだったな。」


「…でもヴァレンティーヌはあのあと見つかったし…」


「見つかった後のヴァレンティーヌと言う女に違和感を感じたりしなかったのか?」


「そういえば…ヴァレンティーヌの手がすっごく冷たくて…」


ステファニーは言いかけたところで、鏡が目に入った。


「ヴァレンティーヌには私と同じ所に花のタトゥーみたいなものが入ってるわ!
でも昨日の夜見たらなくなってて…」


「矛盾点がいろいろあるだろ?」


「…うん…あれは本物のヴァレンティーヌじゃないって事ね?」


「まぁその可能性もあるだろうな。それじゃあ約束通り、俺はあの女についてお前に教えた。好きにさせてもらうからな。」


そう言って男は舌舐めずりをした。
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