Pastel Lover
同じ部活だから、夏休みでも会える。とはいえ、活動日は変わらずに土日以外の5日間だけで、午前中で終了。それでも、1ヶ月近く会えないよりは断然マシだ。
俺と鈴森先輩は、時間が合えば一緒に帰っている。今日は、たまたま。
だからこそ、舞い上がってしまうのだ。
「もう12時半かー。お腹空いたね」
「俺もです」
駅のホームで電車を待つ間、俺の隣に立つ小さな彼女は、時計を見ながらそう言った。俺がぼーっとしていたのと、ゆっくり歩きすぎたせいだ。申し訳ないな。
少し考えて、口を開いた。
「...あの、先輩」
「んー?」
「向こうに着いたら、飯食いに行きません?」
部長と話してから、この恋を全力で頑張ろうと決めた。だけど、何をどうしていいのかわからず、あまり頑張れていないような気もする。でも、思い付いたことは実行に移すようにはしている。だから今も、鳴る鼓動を隠して、彼女を誘うのだ。
ちらり、先輩の反応を伺うと、彼女はキラキラと目を輝かせていた。
「え!行こう行こう!わたし駅の近くの喫茶店、ちょっと気になってたんだよね」
「じゃあそこ行きましょうか」
「やった!あっ、電車来たね」
嬉しそうな彼女の笑顔を見て、思わず心の中でガッツポーズした。断られなくてよかった、と安堵した。