Pastel Lover
魔法の名前
◇ ◇ ◇
夏休みももう半分を過ぎた。
わたしは今日も暑さに耐えながら筆を動かしていた。目の前の絵は、わたしにしてはかなり長期に渡って描いているから、夏休み中には完成させたい。だけど、一向に筆が進まないのだ。混色しなければならないのに、何色を混ぜようとか、考えることに集中できなくて。
気が付けば別のことを考えてる。
わたし、おかしいんだ。
「鈴森先輩」
「...!は、はい」
思わず肩が跳ねてしまった。口から出る言葉も不自然だし、こんなんじゃいつもと違うってバレバレだ。恥ずかしい。
顔が熱いのはどうにもならない。暑さでってことにしとこう。
「...な、なんでしょうか...桐山くん」
緊張しないって言い聞かせるほど、ますます緊張しちゃって、平静じゃいられない。やっぱり変になってしまった。