Pastel Lover
何がそんなにおもしろいのか、まだ笑っている桐山くんを睨んでみたりする。するとそれに気が付いた彼は、わたしの睨みなんて全く効いていない様子で、とんでもないことを口にした。
「はは、すみません。かわいいなと思って」
「な...っ!」
もう、沸騰しそう。
落ち着け、落ち着け。これ以上かき乱されるわけにはいかないんだって。
もしも今わたしが熱中症で倒れたら、それはきっと間違いなくこの暑さのせいと目の前にいる彼が原因だろう。
「...き、桐山くんて、そんなこと言う人だっけ...」
「言わない人でしたけど、今はもう違うんで。言ったじゃないですか、がんばる、って」
「......あ、そ、うだ。なんでわたしを呼んだの」
「ああ、もう部活終わりなんで一緒に帰りませんか、と誘いに」
「...うん」
帰る支度をして、桐山くんとふたり、校門を出る。思えば、桐山くんが右側にいるこの帰り道になんだか慣れちゃってるな。
ちらり、わたしより何十センチも背の高い彼の顔を見た。
...なんでこんなやりにくいんだろ。
思い出すのは、つい3日ほど前のことだ。