Pastel Lover
高い位置で結われた、彼女のポニーテールが揺れる。
センター分けされた前髪の隙間から覗いた瞳が、真っ直ぐに俺を見つめた。まるで目が合ったら固まってしまう魔法をかけられているようだ。
...なんて、綺麗な目をして絵を描くんだろうと思った。
だけど彼女の瞳は、絵に向けられていなくとも、何かを射抜くような、そんな力強さがある。
目を逸らせず何秒か見つめ合って、彼女の口が引きあがった。
「わあ、入部希望者!?」
明るい大きな声に、少し面喰ってしまう。
その人の俺の第一印象は、『目力のある、清楚で大人しそうな人』。だから、こんなにも口をにかっと開いて笑うだなんて、想像の範囲外だったのだ。
彼女は、先ほどの男の先輩と同じように、目を輝かせて椅子から立った。
「入部希望っつーか、仮入部の見学な」
「うん、でも嬉しいよ!うちの部活、部員数も少ないし地味だし...」
「おい」
苦笑いで、彼は彼女の頭を軽く叩く。彼女は子供みたいに笑った。
「まあ、入って入って!」
そのまま変わらない笑顔で、俺を手招きした。