Pastel Lover
「先輩!」
「うっひゃあ!」
ひとり、数日前のことを思い出してぼーっとしていたら、桐山くんが大きな声でわたしを呼んだ。はっとしたら、彼の顔が思いのほか近くにあって驚いて、思わず変な声を出してしまった。
恥ずかしい...。
「あの、電車行っちゃいましたけど」
...え。
「ぬああああ!?」
またも奇声を発してしまうが、今はそれを気にしているどころではない。電車が行ってしまっただと?わたしがふわふわしているばっかりに、彼にまで迷惑をかけてしまった。申し訳ないじゃ言い表せない気持ちに支配され、がっくりと肩を落とした。
なんでわたし、こんなにあの時のこと気になってるんだろ。
「桐山くんごめん...ほんと申し訳ない...わたしにできることならなんでもする...」
「そんな、1本電車逃したくらいなんてことないですよ。また次の電車来るし。それに俺は嬉しいですけどね。先輩ともう少し長くいられるんですから」
「...や、やっぱり桐山くんこんなこと言うなんて変な感じ」
「思ったこと言っただけです。でも...そうですね。なんでもしてくれるって言うなら...」
彼は悪戯ににやりと笑って、言った。
「今度の週末、どっか行きませんか?もちろん、ふたりで」