Pastel Lover
一先ず朝ごはんを食べて再び自室に戻り、散らかったままの洋服を手に取る。
美術館だし、スカートでも大丈夫?気合い入りすぎかな?館内は冷房きいてて寒いかもしれないけど、外歩くときは暑いしなあ。意外と歩くから、背が小さいの目立っちゃうけどヒールが高い靴ははやめといたほうがいいし。うーん、悩む。
クローゼットの中にあるスカートは丈の長いものばかり。もっと可愛い服があれば、と思う。
何を着たっていいはずなのに、なんでこんなに悩んでるんだか。あまり男子と出かける経験がないから緊張しちゃってる。
その緊張の意味は、今日会ったら、わかる気がしてるんだ。
洋服選びに時間をかけていると、スマホが音を立てた。画面には小さな枠のようなものが映し出されていて、そこに表示された名前にまた心拍数は急上昇した。
画面には、"桐山泰生"の文字。
自分のスマホの中に彼の名前があるなんて、不思議な感じだ。まだあまり言葉を交わしていないトーク画面を表示し、届いたメッセージを読む。
『おはようございます。集合場所に着いたらラインしてください。』
今日の集合場所は、美術館の最寄駅。10時にそこへ集合だから、9時半ごろの電車に乗らなければならない。
了解です、と返信をして、ふと時計を見て一瞬頭が真っ白になった。
時計の針は、あと10分で9時を指そうとしていたのだ。