Pastel Lover
なんとか9時34分発の電車に間に合い、乗り込んで漸くほっとする時間が出来た。通学では立っていることが多いけれど、あと20分は乗っていることになるだろうから、空いている席に座って、ため息を吐いた。
...家近いんだから、わざわざ待ち合わせ場所を美術館の最寄駅にする意味あんまりないと思うんだけど。
そう、以前待ち合わせ場所を指定されたときに言ったんだけど。だってそうだ。同じ場所へ向かうのだから同じ電車に乗ってるってことも有得なくないのに、わざわざ別行動しなくったっていいのに。
そう言ったら彼は、待ち合わせの方がデートっぽい、なんて言った。
自分で言っておいて少し照れていたのが、ちょっとかわいいなんて思って、笑ってしまった。
...やっぱりデート、なのか、これ。
"デート"なんて。初めての経験だから。自分とは縁のないもののように思っていた。
今までにない展開。以前なら告白されても、それで終わりだった。それが頑張るって、言われたは前例のないこと。だからこれからのことは予測不可能。
彼のことを知っていくうちに、冷めた人、なんて印象はいつの間にか消えていた。
むしろ、彼はとても温かい人。