Pastel Lover

「美術館に来るとやっぱり...なんかこう、刺激を受けるというか、勉強になりますよね」


「うん、本当にそう思う。あんな風に描けたらこの上ないくらい楽しいんだろうなあって。見ていてもどんな技法使って描いてるのか全然わかんない絵もあったし、本当にすごい...」



筆と絵の具の使い方次第で、あんなにも魅せ方があるだなんて。美術館に来ていつも思う。わたしには、きっと思いつけないだろう。風景画にしても人物画にしても、美術というものそのものを感じる。


目に焼き尽くした、先程まで見ていた絵をもう一度脳内に浮かべた。

焦がれるような、高揚感のような、そんな気持ちも一緒に。



「先輩、何か買いますか?」



自分の内の中で固まっていると、ふいに顔を覗き込まれてはっとする。館内は冷房が少し肌寒く感じるくらい効いているのに、なんだか変な汗が出そう。

この顔の近さにも免疫がついたと思っていたのにな。




「じゃあ、ポストカード買おうかな。いつも美術館来たら買うから...」



ぱっと目を逸らして、ポストカードがズラリと並んだコーナーに目を移す。すると彼もまたそちらを見て、少年みたいに目を輝かせた。絵が好き同士だから、共有ができる気持ち。



「俺もいつも買います。やっぱりポストカードは定番というか...気に入った絵をずっと見ておけるから」


「うん、わかる。もっと長い時間眺めてたいって思うもん」


「飽きないですよね」


「うん、本当にね。桐山くんは、どの絵が気に入ったの?」


「複数あるんですけど...そうですね、この絵、俺はすごく好きだと思いました」



そう言って彼が手に取ったポストカードを覗きこんだ。

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