Pastel Lover
「ごめんね。じゃあ、何か描く?えっと...静物画とか」
わたわたとそう提案された。
首を横に振ることなんてそんな拒否権は俺にはない。だから、小さく頷いた。
「あー、そうだな。じゃあ俺、画用紙とか用意してくるよ」
カタン、と手に持っていた画材を机の上に置いて、また物置のような奥の小部屋へ行った"けいや"先輩。その背中に、"ほしの"先輩は慌ててお礼を告げた。
「じゃあわたし描く題材を用意するよ。静物画用に偽物の果物とかあったと思うんだよね...」
言いながら、美術室内を漁る"ほしの"先輩。
お、という声がして見たら、どうやら見つかったようだ。だけど背の小さい彼女には届きにくい棚の上に乗っている。必死に手を伸ばしている姿を見て、見ていられなくなり足を動かした。すると、手を伸ばした弾みになのか、彼女のポケットから何かが落ちて転がった。