Pastel Lover
「それで、どうかした?」
「え、」
「呼んだでしょ?」
どうしたの、と先輩は首を傾けた。それで、ストラップのことを思い出す。さっきの名前の件が恥ずかしすぎて、忘れていた。
「ああ、これ落としましたよ」
忘れていた感丸出しでストラップを差し出す。
俺の手のひらに乗っているそれを見て、彼女は「ああ!」と声をあげた。
「ありがとう...失くすとこだった」
そっと受け取って、ぎゅっと握りしめた。
何か、大事なものなんだろうか。
すると、そんなに聞きたそうな顔を俺がしていたのかわからないが、先輩はふっと手の中にあるそれを見つめて微笑んだ。そして、口を開く。
「これはね、わたしのお母さんがくれたの。鞄につけてたんだけど、朝取れちゃって。それでポケットに入れてたんだよね」
優しい、顔で。
「そう、なんですか」
「うん、拾ってくれてありがとうね」
ああ、やっぱり大事なものだったのか。良かった、拾って。
そう、思った。