Pastel Lover
「さて、静物画だ!早くしなくちゃね」
腰に手をあてて、俺の方を向いていたのが、再び棚に向けられる。そして彼女は、勢いよく跳び跳ねた。だが、届かない。
...ずっと思っていたが、小さいのだ。
とはいえ、身長はさすがに聞けないけれど。
ぴょんぴょんと跳び跳ねる姿を見かねて、手を伸ばす。先輩は、そんな俺の行動に少し目を見開いて、跳ぶのをやめた。
「あの、これでいいですか?」
「...うん。ごめんね、わたしが小さいばっかりに、手伝わせちゃって。でも、ありがとう」
へへ、と申し訳なさそうに笑う。
...よく笑う人だな。まるで俺と正反対だ。
俺がそう思っている間にも、先輩は受け取った小道具をてきぱきと配置していく。
するとそこに、北岡先輩も戻ってきた。
彼は俺にピンピンに尖ったBの鉛筆八つ切りの画用紙と、それを止める画板と画鋲を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「おう」
俺の方を少しも見ずに、彼はさっき机に置いた画材を持って、自分の絵の前に座った。
「よし、セッティング完了!」
満足そうな声の方を向く。目が合って、にこりと微笑まれた。
「がんばってね」
「はい」
その言葉で、俺の手が動き出した。
鈴森先輩が、視界の隅に映った。彼女は少しの間、俺を見ていた。やがて、俺がここに来たときの位置に戻り、視界には人影がなくなった。