Pastel Lover

車内は割りと混雑していて、座る席がなく、俺たちはドア付近で立っていた。


しゃべりすぎては周りの人の迷惑になるからお互いにあまり話さなくなる。すると沈黙がなんだかくすぐったくて。話していないと、先輩をもっと意識してしまうのだ。



先輩を盗み見ると、ドアに寄り掛かって、流れるように変わっていく景色を眺めていた。

その横顔すら、見とれてしまうほど。


意識している素振りを見せないように気を付けて、俺も外の景色へと意識を集中させた。とは言っても、地元。知っている景色だ。



『次は、××駅______』



アナウンスがかかり、俺たちのいたドアが開いた。だからすぐに降りれた。


定期を通して、改札を抜ける。


もう入学して1ヶ月以上が経っている。ここも見慣れたものだ。数回使っただけでも既に飽きる程見ているような気になったのに。



そこに、鈴森先輩といるってことが、やっぱり変な感じだ。
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